前回の記事でグランドキャニオンで地獄を見た話しを書くつもりだったのに、思いのほか前振りが長くなってしまって本題にはいれませんでした。ごめんなさい。
今回はトレイルへ進んだ後の話から始まります。
ハイキングとは逆の構成
当たり前なんですが、グランドキャニオンって渓谷なんですよね。だから当然トレイルは下って登ってくるという通常のハイキングとは逆の構成となるわけです。朝食後持ち物を準備し、足取りも軽く早速Bright Angel Trailの出発地点に来たツマコ夫婦。案内のおじちゃんに、しっかり水は持ったか?と聞かれ、もうばっちりです!と意気揚々と答えたツマコでした。
トレイルを進むと、当然ルートは下り坂道。実は下り坂道って登りより足に負担がかかるんですよね。旦那はツマコに足元に気を付けて、一定のペースで降りて行こうねって声をかけてくれていました。
結構降りてきたんだねぇ、なんて余裕で写真を撮りまくるツマコ
We have no choice
トレイルを下って15分程でしょうか、かなり降りてきています。内心、余裕じゃんと降りてきた渓谷を写真に撮りまっくていました。そしてそれとは逆に登ってくる人達とすれ違います。ハイキングなどではすれ違う人と軽く挨拶を交わすのですが、こっちは下りなものですから、余裕こいて「もうすぐよ、がんばって」なんて声をかけたりなんかしてましたよ。中には、あまりにつらそうな人がいたので、「あともうちょっと、頑張って」と声をかけたのですが、帰ってきた答えが凄かった。息も絶え絶えで「I know... We must keep going, we have no choice...」と。それを聞いた私は大変だなぁ、と他人事だったのです。この時は。
フラグがたった
トレイルを進むと1.5マイル地点に休憩所があります。朝とはいえ、大分お日様が頭上高く昇ってきていて、どんどん気温が上昇しています。休憩所では一応トイレをすませ、10分程休憩していたのですが、この時旦那が、「どうする?ここで引き返してもいいよ?ここから次の休憩ポイントまでまだ半分もあるよ。」と聞いてきたのでした。(今思うと、ここが死亡フラグだったのです。引き返すと言えばよかった)
まだそれほど体は疲れていなかったし、お昼を食べるには早かったので、「だってまだ1.5マイルしか来てないんでしょ?大丈夫進めるよ。」と答えてしまった。(あ~、バカバカ!)
これがトレイルでの最後の1枚。これ以降写真がない。(撮るどころではなかった模様)
そして・・・
「それじゃ、急がないでいいからのんびり行こうか」とあくまでも私を気遣ってくれる旦那。しかし、その後20分ほど歩いたら、どんどんと気温が上昇していきます。途中でトレイルのレンジャーの人に、陽が真上に来てるからできるだけ木陰で休んで体力温存して、水も切らさないでね、と念を押されました。そして黙々とトレイルを下る私達。そう、もうこの時点で私はエネルギー切れ、朝食をしっかり食べなかったことが影響し始めます。口を開く余裕もなく、ただただ黙って先を見ず、下の地面だけを見つめてロボットの様に歩いています。辛い、辛すぎる・・・。
ようやくついた3マイルポイント
もう体力も尽きかけたかと思えたころ、ようやく休憩ポイントに到着しました。そしてもう写真は1枚もない。そう、スマホを取り出して写真を撮る気力さえ削がれていたのでした。
休憩ポイントで持参したお昼ご飯のサンドイッチを食べ、フルーツを食べ、エネルギーを補給しましたが、出発時点ですでにエネルギーが不足していた私は焼石に水、ではないですが、疲れすぎて食べ物が喉を通っていきません。(新たな死亡フラグ)朝のあの余裕は消し飛んでしまっています。
ここから先、死が何度も脳裏をよぎる(苦笑)
ある程度休息したら、今度は陽が暮れる前に上らないといけません。重い足と体を支えてもらって立ち上がり、来た道を戻ります・・・・・。戻る道すがら、頭から離れないフレーズがありました。「通りゃんせ」のフレーズ、「行きはよいよい、帰りは怖い・・・」もうずっとこのフレーズが頭の中でエンドレス再生されながら、ただひたすら亀のあゆみで登ります。
そして最悪なことに、日中の暑さに負けて、水の消費が早く、途中で尽きてしまったのです。気温の上昇と共に人生これほど汗をかいたことがあるだろうか?という位の汗をかきながら倒れそうになりつつ、それでも自力で登って帰るしか選択肢がないのです。(ハッ!We have no choice....!!!)通常なら休憩ポイントで水の補給ができるのですが、今年は干ばつで水がでない。補給ができなかったのです。
あまりの汗で、びしょぬれになったシャツを脱ぎ、休み休みですが登っていたのですが、突然、汗がピタっと止まりました。人って脱水が極度に達すると汗も唾液も出なくなるんですね。口の中が乾燥で声も出ず、さらにFitbitの心拍数が急上昇し、数歩歩いては休み、また数歩と全く進みません。
旦那が私の荷物を全部持ってくれているにも関わらず、とうとう、もう一歩も動けなくなってしまったのです。それでも、旦那は根気よく待ってくれるし、なんなら、先に上って水を持ってまた降りてくるよ!とまで言ってくれたり。
私としては、もう正常な判断をすることも出来ず、私をここに置いて行って、ただただこの心臓のバクバクを鎮めさせて欲しいという状況に陥ってしまったのです。(なんという迷惑極まりない成り行き)
不幸中の幸いというか、私があまりに時間をとってしまったからなのか、陽が西に傾いてきて、少しづつ気温が下がり始めました。しかし、これ以上待つと今度は夜になってしまいます。旦那の安全のためにも私は登らなければなりません。そして、一歩ずつ右足と左足と両手のポール(持ってて良かった(泣))を交互に出して登り続けました。
そして驚くことに、こんなまさに日が暮れようとしている時間に降りてくる人々に「もう少しよ、頑張って」と励まされました。その時にふと思い出したのです「We must keep going, we have no choice」と言って朝にすれ違った人達を。
ああ、あれは未来の私だったのか。彼らも相当つらかったんだろうな、そんなときに能天気に頑張ってなんて笑顔満面で言われてしんどかっただろうな、って。
結局下りの3倍もの時間をかけて、瀕死、いやほとんどゾンビ化して登り切りました。そして、旦那が急いですぐそばの施設でエリクサー水を汲んで持ってきてやっと人間に戻ることができたのでした。たぶん、あの時私はもうすでに魂が抜けていたと思う。
やっとの思いでホテルへ戻り、旦那がルームサービスを頼んでくれたものの、もう疲れすぎて胃が動かず、ほとんど食べられませんでした。それでも、たくさん持ってきていたゲータレードを飲んで、生きる屍の様に寝ていたらしい。(もう、この辺は疲れすぎて記憶にない)
相当舐め切ってました、グランドキャニオンを!旦那はポイントポイントでちゃんと私に意思を確認してくれたにも関わらず、自分を知らぬ愚かさで旦那に負担をかけてしまいました。翌朝、なんとか持ち直し、旦那にもきちんと謝罪したものの、旦那は「想定内だったから大丈夫、よくあることだから」ってサラっと言ってのけたのでした。強い!強すぎる!(感涙)
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